初午祭



 
私が祖父から聞いた話では、御祭神は、『うかのみたまのみこと』だそうです。
御由緒・・・当社は慶長19年出羽国湯殿山の大日坊長が大畑村総鎮守として羽黒大神の御分霊を勤請し、
三輪里稲荷大明神と称した。
 明治7年4月、社格を村社に列せられました。当社が初午の日に授興している「こんにゃく」の護符は、御鎮座の際、湯殿山秘法として伝えられ、通称こんにゃく稲荷ともいいます。
 昔、縁日の日に、お狐さんが味噌おでんを拾い食いをして、串が喉にひっかかり、なんぎをして居りますと、御神体が「
こんにゃく」の護符を竹串ごと煎じて飲みなさいと教えて下さいました。早速実行しますと串が取れましたという伝説です。
 さて、「
こんにゃく」の護符をどのようにして作るかといいますと、私がまだ子供の頃、私の住所が東京府下南葛飾郡大畑村字101番地といっていた頃、また、神社を中心に昔の吾嬬町西5丁目の一部と西6丁目を下大畑といい、西7丁目、西8丁目と西9丁目の一部を上大畑といっていた頃、今の町会のことと思います。
 年番が上大畑と下大畑とが、1年交代で上大畑では宇田川家の庭、下大畑では石渡家の庭を借りて釜をつき四方に竹を立て、しめ縄を張って神主さんが、お払いをしてから「
こんにゃく」を短尺塩茹でにします。この塩加減が難しく、塩加減は古老がしていたようです。
 ゆで上がった「
こんにゃく」を4斗樽に詰めて、大八車で神社に運び神主さんが御祈祷して拝殿の周りへ並べます。昔は、4斗樽20以上も有りました。
 第二次世界大戦前、私が小僧時分、よく一人で夜番させられ神社前に大きな「
楠木」の御神木があって野鳩が夜中の2時から4時迄鳴くので寂しくて早くが明ければいいと思ったことがありました。
 夜が明けて年番方と交替して家へ帰る途中、その頃、京成向島駅がありまして、一番電車からの千葉、埼玉、茨城の近在の農家の方々と合いまして、「
これから神社に御参りですか」と聞きますと「はい、私で5代続いて御参りしてこんにゃくの護符を受けて帰ります」といっていました。
 「こんにゃく」の護符はそのまま食べてもいいし、乾燥して竹串ごと煎じて、そのお湯を服用すれば喉の患いや声に霊験あらたかです。

 鳶頭 松丸寛一 談